PANAM

フライングライターズというユニットは、計画性のない旅のように、ある日突然生まれた。

今やってる海外取材のアポイントメントが、どうしたわけか数ヶ月経っても決まらなかったことがその発端だった。

似たようなことがこれまでにもあった、とノンフィクションライターにして今やフライングライターの近藤さんが話していた。なんか今さらっと言ってみたけど、職業名にするにはもはやあまりにフライングすぎる。まだ仕事も始まっていないのだ。

「英語のアポイントメントや、現地での動きの打ち合わせなどは、ある程度の英語のコミュニケーション慣れが必要だ。慣れがないとここに時間がかかる上、取材も充実しない。これまで海外取材を手がけてきたライターとして、それらを代行しながら仕事を受けることができるんじゃないか?」

そんなことを話したり、メッセージしているうちに、僕が勝手に「フライングライターズ」という、ロックバンドの「フライング・ロータス」と映画の『フリーダム・ライターズ』と仮面ライダーを足して割ったみたいな、どこかで聴いたことあるような名前をほぼ5秒で思いつき、半日でデザインをつくって翌日にはなんと今のサイトが立ち上がるという、おおよそ「これが一体何の行為なのか分からない」まま生まれたユニットだった。

またたく間にフライヤーやらネームカードやらをつくった。「存在しないものを、存在させようとしている」状況だったので、とりあえずものをつくったら実感沸くかな、ぐらいでやっていた。デザインはできるとすぐにソーシャルメディア上で共有した。デザインを「かっちょいいですね」と言ってくれる人が多い。実はそういう温度を目指してつくったものなので、とても嬉しい。

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世の中には、面白いコレクターがいる。4年ほど前にニューヨークに行った時のことだ。JFK空港からウィリアムスバーグの滞在場所に向かっていた時、ブルックリンのフリーマーケット(正しくはFleaという)に立ち寄った。サンドイッチを食べながらアンティークやアート作品を眺め、「ブルックリンのヒップな空気って言うんですか」と、それを感じるフリをしていたら、「Love Menu Art」というテントがあった。

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入ってみると、そこはアメリカやヨーロッパを中心としたレストランやカフェなどのメニューを、アーカイブしている組織が、それらをアートワークとして販売しているテントだった。

「大学にライブラリがあって、ここにあるのはほんの一部さ」とお店をやっていた50代くらいのおじさんがいろいろ教えてくれた。

デザインやカラーリング、メニューに記載されている料理や店のコンセプトに時代の空気感がきれいに閉じ込められていた。今となってはアートワークとして売られているが、もともとは、どこにでもある店の、何気ないメニューだったはずだ。

かつて日常品だったものが、時間とともにアートワークになる。それって最高にかっちょいいじゃないか。

フライングライターズのテーマカラーとデザインコンセプトは、僕の記憶の中に埋もれていた、この店で出会った、1枚のかっちょいいメニューから着想されている。いや、ここも2秒くらいしか考えてないんだけど。

https://lovemenuart.com/products/pan-american-clipper-2-1940s

https://lovemenuart.com/products/pan-american-clipper-2-1940s

それは、かつてアメリカに存在していた航空会社「パンアメリカン航空(Pan Am/パンナム)」の機内食(だと思われる)用に使われていたメニューだ。

ちなみにパンナムといえば、映画『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』に登場する、レオナルド・ディカプリオ扮する天才詐欺師フランク・W・アバグネイル・Jrが変身したのが、パンアメリカン航空のエリートパイロットだった。

飛ぶ距離とともに、僕らの感性が磨かれるような仕事がしたい。そんな漠然としたイメージを、飛行機と青空のモチーフに重ねた。

少しレトロで、かっちょいい感じ。カッコよくてはいけないのだ。1940年代の、まだまだ世界が広かった時代の空気感。もちろん僕は吸ったことがないんだけど、フライングライターズは「まだまだ自分にとって世界は広くて、知るべきことがきっとたくさんある」という空気感を、多くの人に感じてもらえるような、そんなきっかけを作れるユニットになればいいと思っている。

Fly with us.

AKIHICO MORI / 森 旭彦(Flying writers)